課題
デイセンターの今後の課題
職員配置
デイセンターが制度上は「知的障害者通所更生施設」であること、支援費制度における施設としての指定基準で必要とされる職員数に対し、現状では4倍以上の職員配置を行い、内2名は看護師であることは、先述の通りである。
しかし、様々な障害をもち、それぞれの状況から多様なニーズをもっているメンバーに対し、デイセンターの目標・方針に掲げた支援を確実に実施していくためには、非常に厳しい状況であると言わざるを得ない。
とりわけ、重症心身障害者といわれるメンバーの支援にあたっては、健康管理支援の視点も含めよりきめこまかな対応のできる職員体制が求められる。
昨年度までは通所更生施設の措置費に、地元行政が単費加算を上乗せする形の中で、現状の職員体制を確保してきた。2003年4月から支援費制度となり、「障害程度区分」が設定され、支援度が高い「A区分」の利用者については若干単価の改善が図られたが、現状で必要とされるレベルにはほど遠く、引き続き地元行政の援助が不可欠な状態である。
乙訓2市1町の障害者施策として「重症心身障害者も通える施設」であるデイセンターが作られた経過からも、その支援体制の確保のために地元行政の責任において応分の援助をいただくことは今後も必要不可欠であるが、昨今の財政状況の中では市町ととしての負担にも限界があろう。
根本的には現行の施設制度が、利用者の実態に応じた形で見直されることが必要である。「新障害者基本計画」に基づき、国においては現在、施設体系見直しに向けた作業が進められている。今後の成り行きに注視しつつ、私たちも実践を通して障害の重い人の地域生活における日中活動の場の重要性を発信していかなければならないと考えている。
医療的ケア
職員は位置とあわせて、重症心身障害者の支援を行っていくうえで、医療的ケアの問題は避けて通ることができない。現在、デイセンターで日常生活に必要とされている医療的ケアは、表5 の通りである。
| 内容 | 吸引 (気管切開部) | 吸引 (口腔) | 酸素投与 | 胃ろう | 経鼻チューブ | 吸入 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 人数 | 1 | 3 | 1 | 1 | 2 | 4 |
これらのケアについて、デイセンターでは(1)利用者からの依頼(今のところ口頭によるもの)により、(2)主治医の確認・指示を受け、(3)必要な研修・講習を受ける(嘱託医、看護職員、家族による指導)、という流れを基本に、職員で実施している。
基本的に、重症心身障害者が利用する施設であれば、医療的ケアも当然必要になるが。元々重症心身障害者の利用を前提としていない制度に基づいた施設運営の中で、どこまでのケアを担うことができるのかは難しい問題である。それだけに、そのための条件整備は一義的には行政が責任を持って行うべきであるとは思うが、現状でできる工夫は行い、重症心身障害者が安心・安全に利用できる施設であるための努力を怠らないことが重要であろう。
支援費制度下で契約によるサービスの提供がスタートした中で、医療的ケアの問題についてはますます厳しい状況になってきたと言えるが、乙訓地域や全国での状況にも学びながら、課題を一つずつ解決していけるよう、今後も取り組んでいきたいと考えている。
機能訓練
機能訓練は重度の身体障害をあわせ持つメンバーにとって、体のコンディションを整える、側彎や緊張を防止する、呼吸機能や内臓機能を維持・改善する等、メンバーがよりよい状態で日々の生活を送り活動に取り組むことができる条件作りのための重要な活動プログラムであり、開設当初より重視してきた。訓練メニューの組み立てや職員への指導、メンバーの身体状況のチェックには理学療法士(PT)の関与が欠かせないが、幸いデイセンター開設時から、長岡京市社会福祉協議会からのPT派遣(週1回)を受け、これにより新しい職員も含め、メンバーの日々の機能訓練に取り組むことができた。
しかし、平成13年度の途中から、PTの健康上の問題により定期的な指導を仰げない状況となった。職員による機能訓練は継続して実施しているが、本来実施にあたって必要な専門的な見地からのバックアップが受けられない状態が続いている。
このことは、乙訓地域における各施設共通の課題であり、現在も引き続き療育等支援事業による派遣の実施に向けた動きをつくってきているが、実施にはいたっていない。
現在は重症心身障害児施設「花の木医療福祉センター」が、同じく療育等支援事業により実施している「巡回療育相談」(2〜3か月に1回)の枠内で、PTによる相談・指導を受ける形を取っているが、1日も早く日常的なバックアップが受けられる体制を構築していく必要がある。
自立生活支援と日中活動
デイセンターでは支援方針の中でも自立の支援を行うこととしているが、障害の重いデイセンターのメンバーにとっての「自立支援」とはどのようなものか、ということについて模索している状態である。
近年、「自立」に対するとらえ方も大きく変化してきており、障害を持つ人の自立については、「自己実現の保障」を軸として「自らの生活を自分で決め、必要な支援を利用できる状態」であると言われてきている。この「自らの生活を自分で決め」る力や、そのことを支援者に伝え「必要な支援を利用」する力をいかに日々の日中活動の中で培っていけるか、ということが、まずは私たちがメンバー支援にあたって考えていかなければならないことではないだろうか。「生活」というものに対するイメージが豊かに膨らんでくるためには、具体的な社会資源(例えば交通機関やプール、スーパー、カラオケボックスなど)の活用を通した様々な生活上の体験が必要である。また、支援者との関係性の中で、メンバーそれぞれのコミュニケーションを豊かにしていくことも大切である。
ここで注意しておきたいのは「力をつける」ことが、メンバー本人の「能力を高める」こととそのままイコールではない、ということである。支援者との関係性の中で捉えていくことが重要であり、その意味で日中活動を継続的に支援している職員の役割はやはり大きいと言える。今後、メンバーが地域の中でさまざまな形で生活基盤を確立させていく過程において、直接的にも間接的にも支援していくことが大変重要になってくると考えている。
利用契約制度(支援費支給制度)の下で
今年度(2003年4月)支援費導入によって、利用者お一人ずつと契約書を取り交わさせていただいた。全国的にもそうであったように、乙訓ひまわり園においても契約書の内容や期間、取り交わしの方法など、手探り状態であった。その中で、当然問題点として指摘されるべきことも多いが、とりわけ、「本人の権利としての利用契約」という基本的な視点で今回の契約の在り方を考えたとき、非常に問題の多いものであったのではないかと思われる。
すなわち、「本人の権利」という考え方が、施設側はもちろん家族にしても、現状では非常に弱いのではないか、ということである。今後、一人暮らしであれ、グループホームであれ、家族との同居であれ、メンバーが地域で暮らしていくなかで、「本人の権利」の侵害をいかにして防ぎ守っていくか。このことが確立されない限り、本当の意味で「自己決定の保障」がされたとは言えないのではないか。
乙訓地域における本人の権利擁護のあり方について、今後家族との連携を図りながら、まずは学習を進め一緒に考えていきたいと思っている。
今後の利用ニーズに応えるために
開設当初、21名の利用者でスタートしたデイセンターも、30名の利用定員を満たすこととなった。しかし、今後の養護学校の卒業生についても、デイセンターに対する利用ニーズは高く、とりわけ重症心身障害者への対応については、設立の経過からも今後デイセンターがその役割を果たしていく必要があると認識している。
また、現在デイセンターを利用されている重症心身障害者のメンバーへの対応について「知的障害者通所更生施設」制度による施設であることから、利用者の障害状態に対し必要とされる条件整備にも限界があることは、これまで述べてきた通りである。今後、支援職員のきめこまかな配置、医療・リハビリテーションの専門スタッフ確保等、重症心身障害者への支援条件の改善を図り、利用者の命と健康を守り、より安心・安全な利用ができるよう、重症心身障害者の利用を前提とした制度を活用していくことが必要である。
